日本の英語教育における問題点|海外との違いから英語が話せない理由を説明

日本の英語教育における問題点を解説

日本の英語教育は課題が多く、海外と比較しても英語レベルが低いとされています。小学校から大学まで英語を勉強していても、英会話が全然できないという方も多いでしょう。

2020年度では教育改革によるテコ入れもあり、日本の英語教育も変わりつつありますが、従来の授業と何が変わり、英語スキルを身につけるためにどのような学習が必要か知っておくといいでしょう。

  • 日本の英語教育の現状と課題
  • どうして中学や高校の授業では英語を話せるようになれないのか
  • 話せる英語を学習するためのポイント

など、こちらのページで解説しますので『学校で英語は勉強したけど、英語を全然話せない…』とお悩みの方はぜひご参考ください。

1.日本の英語教育の現状と特徴

日本の英語教育について問題点を説明する前に、現在の状況や世界的に見た評価を以下でまとめました。

1-1.日本人の英語レベルは世界的に見ても低い

世界の英語能力指数ランキング

イー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)による英語能力のベンチマーク「EF EPI英語能力指数」によると、2021年の調査で日本は112ヵ国中78位と低く、本調査開始以来初めて下位3分の1のグループに入りました。

前年(2020年)の55位からも大幅にランクダウンしており、アジアでの順位も今回24ヵ国中13位と、前年の9位から下がっています。

▷参考:世界最大の英語能力指数ランキング

英語レベルが下がった背景として日本人の英語離れや英語に対する苦手意識など、いくつか要因はありますが、義務教育での英語カリキュラムでも英語を話せない・使えない原因を作っていると考えられるでしょう。

日本人が英語が苦手な理由について詳しく!

1-2.文法や語彙などは重点的に学習できる

日本の英語教育の特徴として、以下でも説明しますが高校や大学受験を目的とした学習内容ということから英文法や単語(語彙)には注力しています。

文法の理解や長文の読解力などは学校の勉強で身に付きますので、英語は話せないけど海外の記事や英文のメールはある程度読めるといった方も多いでしょう。中学英語で学んだ過去形・未来形などの時制も、学校で丁寧に教えてもらいましたね。

1-3.10年間学校で勉強しても英語を話せない

英文法や単語・読解スキルなどがあっても英会話で必要な能力とは別になります。大学まで通った方は中学から10年間英語を学んだことになりますが、それでもスピーキングは全くできないケースは多々あるでしょう。

日本の英語教育では、英語力が全く身につかない訳ではなく、大学受験をしっかり対策した学生はTOEICのスコアも600点以上取れたり、英語検定2級以上のレベルに到達することも可能です。ただ、授業での英語だけではネイティブとの英会話ができないというのが現実ですね。

2.日本の英語教育の問題点|英語が話せない・苦手になってしまう理由

日本の英語教育では英会話スキルが身に付かない理由や、英語が苦手になってしまう日本人が多い背景について、もう少し深堀りしてみました。

2-1.受験を意識した学習を重視

日本の英語教育の問題点1

英語を勉強する目的で、実用性というより受験対策の英語力が日本では重要視されています。英語を話すことに興味はないものの、高校や大学受験で英語の科目があるから勉強する学生は多く、進学校や塾でも大学入学共通テストや記述試験の対策を行っています。

学校側でも英語試験を採用する傾向が強くなり、首都圏の私立中では半数以上の学校が一般入試で英語科目を採用しています。英語の試験はこれまで、高校や大学向けというイメージでしたが中学入試でも英語力が問われるようになりました。

▷参考:中学受験に英語の波(毎日新聞)

そのため、コミュニケーションを目的とした語学ではなく、学歴社会の影響を受けた学生が英語の勉強をせざるを得ない状況が生まれています。『共通テストで8割以上の点数を稼ぐポイント』や『長文読解をが早くなる対策』など、受験をいかに乗り越えるかが大事になってしまっていることが問題点だと言えるでしょう。

2-2.そもそも学校での学習時間が足りていない

日本の英語教育の問題点2

詳しくは英語学習で必要な勉強時間で取り上げていますが、中学〜大学までの10年間で英語を勉強しても英語習得必要な時間を満たなさいとされています。

U.S. Department of State(アメリカ国務省)の調査結果による、英語から遠い言語グループである日本語を母国語としている方は、英語習得までに2,760時間の勉強が必要です。

対して、中学から高校の勉強時間目安が1,000~1,500時間、大学では300時間ほどになるため、学校での勉強だけでは1,000時間ほど足りない計算となります。そのため、社会人から本格的に英会話学習を目指す場合には1,000時間の勉強を目指してコツコツ独学を続けたり、英会話スクールに通うことで上達するでしょう。

2-3.英文を和訳していることも課題の一つ

日本の英語教育の問題点3

受験対策にも関連しますが、学校の授業では和訳を中心した演習を行うため、英会話スキルに結びつかないといった課題もあります。

英会話ができるようになるためには、英語を英語のまま理解する英語脳の慣れが必要です。仮に英語を一度日本語に翻訳してから、返答を英語で考えてアウトプットすると、スムーズな英会話が難しくなります。

英語の基礎学習ではもちろん英文の和訳による確認・理解も大事ですが、話せる英語を意識すると和訳に偏った勉強では上達しづらくなるでしょう。

▷参考:英会話の上達法をスクール講師より解説!

2-4.海外留学を経験している教員も不足

日本の英語教育の問題点4

英語教育に関する課題では、日本の英語担当教員の英語力不足もあります。

文部科学省による英語教育実施状況の調査結果では、英語担当の教員に対して海外の学校や研修施設などでの留学経験についてアンケート実施したところ半数近くの48.7%が留学経験がないといった回答でした。

▷参考:英語教育実施状況調査の結果(平成28年度)

半年以上の留学経験になると約25%とさらに少なくなり、英語力=留学経験とは必ずしもいませんが、海外での語学経験・コミュニケーションスキルがない教員も中にはいますので、課題の一つだと思われます。

3.海外・他国の英語教育は日本とどう違う?

日本と海外の英語学習の違い

日本の英語教育において英語が話せるようになれない問題点がある一方で、海外ではどのように英語を学習する環境が進んでいるのか比較してみました。

3-1.他アジア諸国では英語教育の必須化を早く導入

アジア圏内で比較すると、日本の英語教育必須化は遅れています。以下では、2021年のEF EPI英語能力指数において比較的順位の高いアジア諸国の英語教育について、概要をまとめました。

アジア諸国 詳細
韓国(英語能力指数:37位) 1997年の通貨危機をきっかけに、グローバル化の推進が進んでいます。同年には初等学校第3学年(小学校3年)より、英語が必須科目となりました。
フィリピン(英語能力指数:18位) 世界的に見ても英語力の高い国で、小学校1年より英語の授業を受けるようになります。授業回数も日本と比較してかなり多く、60分の授業を週5回行います。
シンガポール(英語能力指数:4位) シンガポールも小学校1年から英語の授業が始まり、英語能力指数でもTop5に入るほどの高い英語力となります。また、多民族国家というグローバルな環境であることから、日常生活からも英語を使う機会が多いとされています。

日本と比べて小学校の時から英語を学習する時間が圧倒的に長いこともあり、英会話ができる学生が多いですね。

3-2.英語の授業回数・時間も日本と比べて多い

上記でも少し触れましたが、英語の授業回数・勉強時間が日本と比較して多いです。日本では2020年の教育改革以降でも、小学校3~4年で週1回・小学校5~6年で週2回ほどですが、海外では以下の通りです。

  • 韓国:週3回以上(小学校3年〜)
  • フィリピン:週5回(小学校1年〜)
  • シンガポール:週15時間程度(小学校1年〜)

日本では週1~2時間程度の勉強時間であるのに対して、海外ではいかに英語の学習時間が多いのかがわかります。

3-3.学校の授業以外でも英語を使う機会が多い

また、日本国内では英語を利用する機会が少ないことも、英語が使えない一つの要因となっているでしょう。

言語学習的なグローバル化も海外から比較して遅れを取っており、授業以外でも英語を使う学校行事や、シンガポールでは日常生活において英会話に触れる機会が多いなど、自然と英語に慣れ親しむ環境から英語力が養われます。

4.日本の英語教育における改善ポイント|2020年の教育改革

ただ、日本の義務教育でも改革はすでに進んでおり、特にコミュニケーション能力の改善を目的とした見直しが2020年の教育改革で実施しています。

4-1.英語を聞く・話す・読む・書く4技能でコミュニケーション能力を重視

教育改革のポイント1

文部科学省による英語教育の方策・方向性に関する見解でも、グローバル社会の適用・異文化コミュニケーションの能力を育てることに重視しています。

英語のコミュニケーション能力は具体的に、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能があり、基本的な英語の知識だけでなくアウトプットする力まで、小学校からトレーニングすることが教育改革で求められます。

▷参考:今後の英語学習の改善(文部科学省)

今回の教育改革により、小学校中学年(小学校3~4年)から外国語活動がスタートしますが、より早くから学習をすることで英語のリスニングや発音の向上が期待されます。体験的に英語への理解を深め、小学校高学年(小学校5~6年)で英語表現を身に付ける実践的な学習の流れとなるでしょう。

4-2.英語を使って何ができるようになるかを具体化

教育改革のポイント2

中学校・高校では「英語を使って何ができるようになるか」という観点より、学習到達目標の設定がされます。

テストの点数を上げるとか、大学受験に合格するといった目的ではなく、英語でのコミュニケーション活用を重視したゴール設定が望まれます。英語でのスピーチ大会やエッセイなど、アウトプットの結果を基準に指導と評価の改善へとつながるでしょう。

4-3.大学受験の内容も刷新|英語でのコミュニケーション能力が問われる

教育改革のポイント3

また、大学受験も今後刷新されることが予測されます。コミュニケーションスキルに紐づく4技能全てを測定する大学試験は現状ほとんどないため、英語での面接や話す力が試験で問われます。

英語でのコミュニケーション能力を基準に大学入学者の選抜がされるようになれば、必然的に英語を話す力の需要も高まるでしょう。

5.英語教育の問題点から|使える・話せる英語を学ぶために必要なこと

使える・話せる英語を習得するには

英語教育の問題点と改善の傾向を一通り紹介しましたが、英会話スキルを今後身につけたい方向けに勉強の進め方や英語学習への意識作りなど、重要なポイントをまとめましたのでご参考ください。

5-1.英会話スキルを身につける上での目標・夢を明確に

日本の英語教育では受験対策や、とりあえず良い大学に行くことを目的に勉強をする傾向にありますが、実用的な英語スキルを習得するには個人の目標や夢の具体化が求められます。

  • どういったシーンで英語を話せるようになりたいか?
  • なぜ英語を話したい・使いたいと思ったか?
  • 英会話ができる自分の理想像は?

英語学習の目標を決めると、ゴールに向かって何をするべきか、どのような学習計画を用意すればいいかなどモチベーション向上にもつながります。

英会話の学習目標の決め方を英会話講師より解説!

5-2.英語を全く話せない方はまず日常会話レベルを目指す

学生の頃から英語が苦手な方や、英語を勉強しても英会話が全くできない場合、ビジネスシーンなどいきなり高度な英会話スキルを目指すよりも日常会話レベルから意識するといいでしょう。

求める英語レベルを高くし過ぎると、英語学習の壁・難易度が上がりなかなか学習が進まない要因となります。ご自身の英会話レベルにあわせた目標設定をおすすめします。関連ページより、英語の日常会話レベル基準と学習方法をご参考いただけます。

5-3.英語力を伸ばすために効果的な学習方法もチェック!

自分の英語能力や、英語力を伸ばすための学習方法・独学の進め方について、当サイトで詳しく解説していますので関連ページもお読みくださいませ。

英語力は英会話スクールやコーチングに頼るより、基礎的な学習を独学で進めた方が確実にレベルアップします。初心者の方や、英会話スクールで一度失敗した方でも、基本から立ち戻って勉強を進められるポイントを確認しておきましょう。

英語を話せるようになりたい方へ【独学のポイントまとめ】

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【松本兼頌(Matsumoto Kensho)】

英会話コーチング歴は10年以上。これまでに300人以上の英会話学習者をサポートし、スピーキング力の向上や転職成功といった多くの成果を実現してきました。特に、初心者が陥りやすい失敗や学習のつまずきポイントを熟知。その経験をもとに、「どうすれば英語が話せるようになるか」を具体的かつ実践的に解説しています。日常英会話からビジネス英語まで幅広く対応し、スピーキング・発音・リスニングに重点を置いて監修しています。

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