形式文法と機能文法を理解すると英語学習の効率が上がる理由とは?

形式文法と機能文法の違い

これから英語を本格的に学習する方で、「英文法や単語など基礎から学ぶ」や「中学英語から復習する」など、基本から学び直すことを意識されているのではないでしょうか。

確かに、英語初心者にとって基本からの勉強も大事ですが、英語の上達では文法だけでなくコミュニケーションとしてどう伝えるか、アウトプット的なトレーニングも求められます。

そこで、言語研究の観点から「形式文法」と「機能文法」の双方を基に、英語学習の効率を上げるポイントを解説します。言語学や文法など難しそうな言葉を使っていますが、内容自体はシンプルで英語初心者の方でもすぐ実践できます!

1.形式文法と機能文法の違い

はじめに、形式文法と機能文法のポイントから解説します。それぞれの違いについて要点は以下の通りです。

  • 形式文法|文法や構文を重点的に学習(インプット学習)
  • 機能文法|コミュニケーション面での機能を重視した学習(アウトプット学習)

1-1.形式文法とは|文法的な観点から学習する方法

形式文法とは

形式文法はいわゆるインプット学習で、文法的な観点で学習を行います。中学や高校での授業や、大学入試・TOEICなどの試験などで問われる英語力も、この形式文法が中心だと言えるでしょう。

具体的には、過去形や未来形など時制や五文型といった構文、英会話でよく使う英単語などを学びます。日本語でも小学校の時に「て・に・を・は」や平仮名カタカナを学ぶように、正しい文法で言語表現をするために必要な知識となります。

1-2.機能文法とは|文法より意味やコミュニケーションの意図を重視する学習

機能文法とは

対して機能文法は「機能」という表現をしているように、言語面でのコミュニケーション・伝わり方を重視する学習となります。

機能文法に関して、海外の教授:Mark Halliday(マーク・ハリデー)より提唱された言語研究が参考になりますので、以下でも詳しく解説します。

※機能文法を簡単にいうと、同じ言葉・フレーズでも場面や文脈によって、変わってくる意味を分析する学習です。

1-3.一般的な独学や義務教育の学習では形式文法が基本

英語学習に関するイメージは、文法や単語など独学で対策できる内容がメインになり、実際に学校での授業や英語関連の資格試験では、英文法をはじめ語彙力やリスニング・スピーキングなどが問われます。

ただ、日本の英語教育における問題点でも解説していますが、文法や語彙力などを重点的に対策できても、学校で習う英語だけでは英会話スキルなど実用的な英語力が身に付かない課題もありますね。

2.理想的な英語学習は形式文法と機能文法をバランスよく行う

そのため、英語学習をより効果的にするべく、形式文法と機能文法それぞれの勉強をバランス良く行うことが大事です。

英会話学習でありがちな失敗例で、「インプットの形式文法がそんなに大した勉強にならないから、オンライン英会話でどんどん実践しよう!」と思い、オンライン英会話中心のトレーニングをする方がいますね。

ですが形式文法がよくないという話ではなく、インプットとアウトプットの両方を取り入れることで、英語力が向上するのが正しいです。

2-1.形式文法(インプットの英語学習)を先に対策

形式文法からの対策

初心者向けの英語学習では、インプット型の形式文法から対策するといいでしょう。

  • 英語の語順、構文に慣れる(五文型の理解)
  • コミュニケーションで必要な時制のルール、相手への質問方法
  • 細かなニュアンスを伝えるのに役立つ文法、品詞

英会話スキルでは、この形式文法の知識がまず必要となります。英語構文が理解できないと正しい語順でアウトプットできず、疑問文のフレーズを覚えないと相手への質問・会話が成立しないように、英語を効率的に学習するためにもインプットが優先されます。

日常的な英会話スキルであれば、中学英語レベルの文法・語彙で問題ありません。特段難しい知識は要求されませんので、コツコツと勉強すれば英語が苦手な方でも話せるようになるでしょう。

英文法を効率的に学習する順番を解説!

2-2.インプットができたらアウトプットの機能文法で英語学習

機能文法のポイント

インプット学習がある程度進められたら、スピーキングや発音・英会話学習などアウトプットの機能文法を対策しましょう。

言語研究者のHallidayによると、言葉の意味や理解では文法的な側面だけでなく、言語がどのような状況で使われているかまで分析する必要があるとされています。

英会話のトレーニングでも、自分の学んだ英語のフレーズや単語がネイティブとの会話で正しく通じているかどうか、自分の意図した意味で共有されているかどうか確かめるのが効果的です。通じない場合は表現が悪いのか、発音が変なのか、それとも場面に合わないフレーズなのかなど理解することで機能文法の質が高くなります。

2-3.英語力が伸びない人=形式文法と機能文法の学習バランスが悪い

形式文法と機能文法の学習バランス

「学校での英語は役に立たないから、アウトプット中心で英語を学ぶ」とか「とりあえず英単語を暗記する」など、インプットとアウトプットの偏りがある方は英語力が伸びにくいです。

第二言語習得理論の一説でも紹介していますが、インプットとアウトプットは相乗効果の関係にあります。インプットで知識を得て、アウトプットの実践で自分の苦手な分野を分析して、そこからより効果的・重点的なインプットの学習につながります。

▷参考:第二言語習得理論のポイントを分かりやすく説明

3.機能文法をもっと詳しく!|概要と英語学習で重要なポイント

形式文法に該当する英文法などのインプット学習は割とイメージできるかもしれませんが、「機能文法としての英語の使われ方・言語の分析って何?」と疑問を持たれる方向けに、機能文法をもう少し掘り下げてみます。

3-1.Mark Hallidayにより構築された理論

Mark Hallidayの選択体系機能文法

上記でもお伝えしましたが、機能文法の研究についてHallidayという研究者の考察が参考になります。

正確には「選択体系機能文法」という呼ばれ方をしますが、「選択体系」という意味については以下の解釈がされます。

  • 言語=社会や文化を構成している記号体系の一つ
  • 英語や日本語などの言語を使う際、「コンテクスト」によって適切なフレーズを使い分ける
  • コンテクストは言わば「状況的文脈」や「背景」といった意味

すごく簡潔に言うと、人は場面に応じて言葉を使い分ける必要がありますよ、という話をHallidayは選択体系機能文法で説明しています。

3-2.英語を理解するためには状況的文脈・背景を知る必要がある

日本語での例を出しますと、「信じられん。マジで言ってんのそれ?」というAのフレーズと、「信じ難いですが、それは本当のことでしょうか?」というBのフレーズがあるとしましょう。

それぞれ、言葉としての意味は似ているのですが、以下の通り話し相手や状況によって使い分けることが普通です。

日本語での状況的文脈の例

  • Aのフレーズを使うシーン:仲の良い女友達が、「そういやこの前クレカ、どこかに落としたまんまだったわ」と突然言ってきた際の返答
  • Bのフレーズを使うシーン:職場での上司が、「どうやら取引先で、倒産の噂があるらしい」と神妙な面持ちで言ってきた際の返答

仮に上司にAのフレーズを言ったら「なんなんだその言葉遣いは!」と怒られる可能性が高く、女友達にBのフレーズを言ったら「急にかしこまってどうしたの、ウケる」と不思議に思われるでしょう。

このような事例が機能文法の一つの説明になっており、英語でも同様にフレーズや文法だけを覚えるだけでなく、個別の状況的文脈・背景にあわせた最適な表現・アウトプットの活用を覚えることで、ネイティブと同等の英会話が可能となります。

3-3.状況的文脈で重要な3つの要素

コンテクストや状況的文脈などの言い方をしましたが、言語を使う上での背景的な要素は3つあります。

状況的文脈で重要な3つの要素

  • フィールド(言語活動領域):何がどう起こっているか・場所やシーン
  • テナー(役割関係):どのような相手と話しているか・人間関係
  • モード(伝達様式):どんな媒体でコミュニケーションしているか・話し言葉や書き言葉など

今度は英語での例でフィールドとテナーとモード、それぞれを説明します。

  • フィールド:オフィスで仕事をしない部下を呼んで注意をしたい
  • テナー:職場での上司と部下で、関係性が悪い
  • モード:話し言葉(直接での会話)

といった状況であれば、「Please work harder. (もっとしっかり働いてください)」と直接的な指示・命令表現ができるでしょう。

  • フィールド:仕事で大変で困っている同僚を励ましたい
  • テナー:職場での同僚・同期で仲が良い
  • モード:書き言葉(チャットでのやり取り)

一方で、仕事で困っている同僚をチャットで励ます場合には、「Good luck with your work.(お仕事がんばってね!)」と親しい感じでコミュニケーションを取るのが自然ですね。

このように、「働いてください」という根本的な意味は同じでも、状況的文脈による使い分けができます。話の前後やコミュニケーションを取る相手との関係性などで、伝わり方が変わるでしょう。

3-4.現代のネットスラングも機能文法の一種

場所やコンテクストにより伝わる意味も違ってくることに関連して、ネットスラングも機能文法の一種だと言えます。

ネットスラングは、SNSや掲示板などネット上のフィールドと、書き言葉というモードの要素があり、例えば若者言葉の一つである「草」をネット上で記載したら「面白い」という伝わり方がされるように、本来の言葉の意味から逸脱します。

ネットスラングも機能文法の一つ

「草生える」というフレーズは、形式文法的な観点では正しくない言い方でありますが、ネット上では自分の感情を伝えるのに充分です。

これを参考に考察すると完璧な文法に沿わなくとも、状況的な文脈に適合したフレーズであったり、またはボディーランゲージや顔の表情(フェイシャルエクスプレッション)で言葉の意味を補完する役割にもなります。

伝える意思さえあれば機能文法上、相手とコミュニケーションが図れます。ただ、機能文法だけに頼ると構文や英文法などが不完全になり、表現の幅を狭めてしまうので形式文法の知識も大事ですね。形式文法と機能文法の両方を理解できれば、さらに正確に言語で会話ができるでしょう!

4.Hallidayの機能文法から参考になる英語学習方法

機能文法の重要なポイントを確認した上で、普段の英語学習でどう対策していくべきか以下でまとめました。

4-1.ただ英単語・フレーズを学ぶのでなく文化やシチュエーションをイメージ

海外文化やシチュエーションをイメージ

実用的な英語スキルを身に付けるために、英文法や単語だけ個別で勉強するだけでなく、ネイティブとの英会話を想定した表現練習や、海外文化の理解も求められます。

英語を話す場所(フィールド)とネイティブの誰を想定した会話か(テナー)というポイント、どのような文章・表現のルールがあるか(モード)を把握することで、ネイティブと同じ立場でのコミュニケーションが可能です。

動詞などのイメージもネイティブと同じように想像すると、ネイティブのニュアンスが掴めてきます。英会話で活用しやすい基本動詞について、関連ページでご紹介していますのでこちらもお読みください。

便利に活用できる英語の基本動詞はこちら!

4-2.単語やフレーズのニュアンスをネイティブの英語から理解する

ネイティブの英語を参考

機能文法の理解は具体性や実用性が重視されますが、学習方法で効果的なのはネイティブの英語を教材にすることですね。

  • 海外ドラマや映画の英語をリスニングして、フレーズを覚える
  • YouTube動画より海外ニュースを毎日聞く
  • アプリで外国の著名人の演説を参考にスピーキング・発音練習をする

など、普段の独学でもネイティブ英語をお手本とすることで、状況的文脈ごとの使い分け・機能文法の理解が深まるでしょう。関連記事で、TEDを使ったリスニング対策もご参考いただけます。

ネイティブレベルの英会話レベルを目指すポイントを解説

4-3.何を伝えたいのかを明確に意識する表現トレーニング

表現練習の対策

また、機能文法ではコミュニケーションの相手に説明や思考、感情などどう伝わるのかが問われます。英文法や構文自体など形式文法として合っていても、話の起承転結や要約がゴチャゴチャだと本来の意図から外れたニュアンス・情報で相手に共有されるでしょう。

英会話スキルの上達を目的にディクテーションから文章全体を理解し、サマライジングでまとめる能力のトレーニングが有効です。インプットとアプトプットの両方を対策できますので、こちらも独学でご参考ください。

ディクテーションの学習方法をチェック

サマライジングで英語表現力をアップする方法とは?

5.形式文法と機能文法から学べる英語対策を実践!

形式文法と機能文法の役割や英語学習について、重要なポイントは以下の通りです。

  • 論理的な学習方法を知れば効率良く独学を進められる
  • 今まで行っていた独学の間違いにも気付ける(形式文法と機能文法をバランス良く行う)
  • 相手への伝わり方・コミュニケーションの場面を常に想定

今回は言語学的な側面から解説したので難しい話に思えたかもしれませんが、まとめると「英語の基礎と実践はどちらも大事」ということと、「多少文法が間違っていても、相手に伝える意思があればコミュニケーションが成立する」のポイントになります。

英語への苦手意識がある方や、これまでトライした英会話レッスンでうまく話せずネイティブ講師を困らせてしまった…など失敗経験があっても、問題点や改善点が分かれば英会話スキルは上達します。

英会話学習に関して、研究されている内容や理論を参考にすると確実ですね。他にも重要な「英語脳」の考え方や作り方も、英語が話せない方にとって役立つ情報になりますので、以下ページよりお読みいただけますと幸いです!

英語脳の作り方と効果的な学習対策も!

▷おすすめ記事:語学の勉強法・習得のコツを詳しく解説

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【松本兼頌(Matsumoto Kensho)】

英会話コーチング歴は10年以上。これまでに300人以上の英会話学習者をサポートし、スピーキング力の向上や転職成功といった多くの成果を実現してきました。特に、初心者が陥りやすい失敗や学習のつまずきポイントを熟知。その経験をもとに、「どうすれば英語が話せるようになるか」を具体的かつ実践的に解説しています。日常英会話からビジネス英語まで幅広く対応し、スピーキング・発音・リスニングに重点を置いて監修しています。

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